中小企業向けバーコード在庫管理システム比較 - 大手ERPと段階的導入の選択

中小企業向けバーコード在庫管理システム比較 - 大手ERPと段階的導入の選択
バーコードリーダーを導入した在庫管理は、多くの中小企業にとって「いつかは実現したい」目標です。しかし現実は厳しく、ハンディターミナルの導入経験を持つ企業は少ないのが実情です。むしろ、バーコード在庫管理への一歩目で失敗する企業のほうが多いと言えるでしょう。
この記事では、実際に18社の在庫管理システム導入案件を分析した結果から見えた、中小企業がバーコード在庫管理を実現する際に直面する現実と、成功する選択肢を詳しく解説します。
バーコード在庫管理がなぜ中小企業には難しいのか
美容商材卸売業の現実 - 弥生販売からの脱却
東京都内の美容商材卸売業は、従業員8名の企業です。5年以上にわたって弥生販売を使い続けてきました。しかし今、その企業は大きな課題に直面しています。毎月の棚卸で200万円から300万円の在庫ズレが発生しているのです。
同社が販売している商品数は数千点に及びます。各商品の入出庫は電話で報告され、スタッフが手作業でExcelに入力しています。入力ミス、聞き間違い、入力忘れが重なって、帳簿在庫と実在庫のズレが累積していくのです。
そこで同社は決断しました。バーコードリーダーを導入して、入出庫をすべてシステムで自動管理する。これなら手入力ミスはゼロになるはずです。しかし導入検討を始めて間もなく、彼らは現実に直面しました。
弥生販売にはバーコード入出庫管理機能がない。これを実現するには、システムをリプレイスする必要があります。そして彼らが受け取った見積もりは、年間566万円。これは同社の年間予算200万円を大きく上回る金額でした。
動物病院チェーン - 40拠点での統一化の難題
別の例として、40店舗の動物病院を運営する企業があります。M&Aによる買収企業が増えたため、各病院ごとに異なっていた在庫管理方法を統一する必要が生じました。現在、各院ではExcelや紙でバラバラに管理しているのです。
同社が求めるバーコード在庫管理の要件は以下のようなものです。キーエンスのハンディターミナル「BT-W350」で商品を読み取り、入荷時と使用時に自動で在庫が増減する。商品の使用期限も一緒に管理できる。40拠点の各院と本社で権限を分けた管理ができる。
この要件に対し、大手ERPベンダーの見積もりを取ると、初期費用だけで500万円。月額保守費用は30万円。これは同社の予算規模ではとうてい実現できません。
自動販売機飲料の在庫管理 - ハンディターミナルの選定も課題
自動販売機で販売する飲料を扱う企業の例もあります。同社の在庫管理システムは、オンプレミス型で、現在利用中の業務システム「777」との連携が必須です。約400~500種類の飲料の入出庫を、ハンディターミナルでバーコード読み取りして管理したいのです。
ところが課題があります。同社は「使用するハンディターミナルに指定がないため、ご提案いただきたい」と要望しています。つまり、システムの選定と同時に、ハンディターミナルの選定も行わなければならないのです。さらにオンプレミス型という要件があるため、クラウドSaaSの簡便な導入では実現できません。
バーコード在庫管理システムの3つの選択肢の現実
選択肢1:大手ERP(SAP、NetSuite など)
大手ERPでバーコード在庫管理を実現した企業は多くあります。大規模な製造業や流通企業では、これが標準的なシステムです。しかし中小企業にとっては、コストが大きな障壁になります。
初期費用は300万円から1,000万円。月額保守費用は20万円から50万円。バーコードリーダーのような周辺機器の連携には、追加のカスタマイズ費用が発生します。導入期間も数ヶ月から1年を要することが多く、その間のコンサルティング費用も追加されます。
従業員10名から30名の企業にとって、年間500万円以上の投資が必要な選択肢は、現実的ではありません。返却率が高い分野でもあり、導入後の運用が想定より複雑で、結局使いこなせていない企業も多く見かけます。
選択肢2:中堅SaaS(楽楽販売、Zaico など)
ここ数年で登場した中堅クラウドSaaSは、大手ERPと簡易型SaaSの中間に位置しています。月額数万円から始められて、バーコード機能に対応しているものもあります。
しかし多くの中小企業が陥る落とし穴があります。基本的なバーコード入出庫管理はできるのですが、複雑な要件に対応するにはカスタマイズが必要になるのです。例えば、複数の既存システムとの連携、特定業務フローに合わせた機能追加、ハンディターミナルとの統合連携などです。
これらのカスタマイズを依頼すると、気づけば費用が膨らんでいます。結局、年間200万円から300万円の予算で収まらなくなってしまうのです。さらに、中堅SaaSの場合、ベンダーのサポート体制に差があります。導入後のトラブル対応が遅い、カスタマイズの対応範囲が限定的といった問題に直面する企業も少なくありません。
選択肢3:段階的成長型システム(Wikiだるまなど)
段階的成長型システムは、バーコード在庫管理の「ちょうどいい選択肢」として設計されています。初期費用0円、月額3万円からのスタートです。
Wikiだるまのような段階的成長型システムの特徴は、ビジネスの成長段階に応じて機能を追加できることです。最初は基本的な在庫管理とバーコード入出庫から始めて、後から複数拠点管理、API連携、権限管理などを追加できます。年間予算200万円から300万円の枠内で、必要な機能を段階的に実装していくのです。
さらに、既存システムとのAPI連携が充実しているため、新しいシステムを導入しながら、現在の業務フローにある程度適応させることができます。例えば、弥生会計との連携、freee会計との連携、Gmailとの連携などです。
多くの段階的成長型システムは、導入企業の業種に応じたカスタマイズに積極的に対応しています。飲料卸向け、動物病院向け、製造業向けといった業種別テンプレートを持つシステムもあります。
実際の導入事例から見える成功のポイント
ハンディターミナルの選定がシステム導入の成否を分ける
バーコード在庫管理を導入する際、ハンディターミナルの選定は大きな意思決定です。多くの企業が陥る誤りは、「システムが決まってから、ハンディターミナルを探す」というアプローチです。
実際には、ハンディターミナルの種類によって、対応するシステムが限定されることがあります。例えば、キーエンス製のハンディターミナルを使いたいという要件がある場合、それに対応したシステムは限定されます。複雑な読み取り機能(文字認識、QRコード同時読み取りなど)が必要な場合、それに対応しているハンディターミナルは絞られます。
成功している企業は、ハンディターミナルとシステムを一体として検討しています。「どのような商品をどのようなフローで管理したいのか」を明確にした上で、それに最適なハンディターミナルを選定し、そのターミナルに対応したシステムを選ぶという順序です。
オンプレミスとクラウドの判断基準
自動販売機飲料の企業のように、「オンプレミス型であること」という要件を持つ企業が存在します。これは通常、既存システムとのネットワーク構成や、特定の法令対応(個人情報の社内保管要件など)による制約です。
段階的成長型システムの中には、オンプレミス型での提供に対応しているものもあります。クラウド型を基本としながらも、特定の要件があればオンプレミスでの構築にも応じるということです。このような柔軟性がある企業を選ぶことが、導入成功の鍵になります。
バーコード在庫管理導入の実現可能性
結論から言えば、年間予算200万円から300万円の中小企業が、バーコード在庫管理を実現することは十分に可能です。ただし、大手ERPではなく、段階的成長型システムという選択肢を検討する必要があります。
導入成功の条件は、自社の課題を明確に把握することと、それに対応できるベンダーを選ぶことです。単に「安いから」という理由で選ぶと、後になって追加カスタマイズに費用がかかったり、導入後のサポートが不十分になったりします。
まずは30分の無料相談で、現在のシステム構成と業務フロー、ハンディターミナルの要件などを整理してみてください。それに基づいて、実現可能な導入プランと見積もりを提示することができます。

