BCP対策に最適なSaaS型受発注システム|大企業向けクラウド移行戦略

企業のBCP対策における受発注システムの重要性
近年、自然災害やサイバー攻撃、システム障害など、予期せぬ事態で基幹システムが停止するリスクが高まっています。特に受発注システムは企業の血流とも言える重要な業務基盤であり、システムが数時間停止するだけで取引先との信頼関係に影響し、ビジネス機会の損失につながります。
従来、多くの企業では自社開発したオンプレミスのシステムで受注管理、発注管理、在庫管理、請求管理を一元的に行ってきました。しかし、データセンターの被災、サーバー障害、ネットワーク断絶といった事態が発生した場合、システム全体が利用できなくなる可能性があります。このようなリスクに対する備えとして、SaaS型の受発注管理サービスをBCP対策に位置づける企業が増えています。
BCP対策としてのSaaS型システムの優位性
SaaS型の受発注管理システムは、BCP対策として従来のオンプレミスシステムに比べて多くの利点を持っています。
まず、クラウド上で稼働しているため、自社のサーバーやデータセンターが被災してもサービスを継続利用できます。SaaSベンダーは通常、複数のデータセンターで冗長化を行っており、一つの拠点が影響を受けても自動的に別の拠点に切り替わる仕組みを持っています。これにより、自社で高額なBCP投資を行うことなく、高いレベルの事業継続性を確保できます。
次に、インターネット環境さえあればどこからでもアクセスできる点も重要です。オフィスが使えなくなった場合でも、社員が自宅や別の拠点から業務を継続できます。特にEdgeなどの標準的なブラウザで動作するシステムであれば、特別なソフトウェアのインストールも不要で、緊急時でも迅速に業務を再開できます。
さらに、導入期間の短さも大きな特徴です。オンプレミスシステムの構築には数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありませんが、SaaS型システムであれば、早ければ1〜2週間程度で運用を開始できます。BCP対策として「いつ起こるかわからない緊急事態」に備えるためには、この迅速性が極めて重要です。
既存システムとSaaSシステムの併用戦略
BCP対策としてSaaS型システムを導入する場合、既存の自社開発システムを完全に置き換えるのではなく、併用する形での導入が現実的です。平常時は既存システムをメインに使用し、緊急時にはSaaS型システムに切り替えるというハイブリッド運用により、投資を抑えながら事業継続性を確保できます。
この戦略を成功させるためには、SaaS型システムに最低限必要な機能を明確にすることが重要です。すべての機能を移行しようとすると、システムの複雑さが増し、運用コストも膨らみます。まずは業務継続に不可欠な発注管理と納品管理に絞り込み、段階的に在庫管理や請求管理を追加していくアプローチが効果的です。
平常時からSaaS型システムを一部の業務で使用しておくことも重要なポイントです。緊急時に初めて使うシステムでは、操作に戸惑い、かえって混乱を招く可能性があります。例えば、特定の商品群や一部の取引先の発注管理をSaaS型システムで行うなど、小規模な範囲で日常的に使用することで、社員がシステムに慣れ、緊急時にもスムーズに移行できます。
大規模利用を想定した選定ポイント
従業員300名以上、利用者100名以上といった大規模な環境でSaaS型システムを導入する場合、特に注意すべきポイントがあります。
まず、システムのパフォーマンスです。多数のユーザーが同時にアクセスしても、処理速度が低下しないか、確認が必要です。特にピーク時間帯に複数の部署が同時に発注作業を行う場合、レスポンスの遅延は業務効率に直結します。トライアル期間中に、想定される最大同時接続数でのテストを行うことをお勧めします。
ユーザー管理機能も重要です。100名以上が利用する環境では、部署ごと、役職ごとに適切な権限設定ができることが必須です。発注権限を持つ者、承認権限を持つ者、閲覧のみ可能な者など、細かく権限を設定できるシステムを選ぶべきです。また、社員の異動や退職に伴うアカウント管理も頻繁に発生するため、管理者が簡単に権限を変更できるインターフェースが求められます。
データのエクスポート機能も見落とせません。既存システムとの併用や、将来的な分析のために、発注データ、納品データ、在庫データなどをCSV形式で出力できることが望ましいです。特に月次や年次での報告資料作成時に、データを抽出して加工する必要が生じるため、柔軟なエクスポート機能があると業務効率が大きく向上します。
発注管理に求められる具体的な機能
BCP対策として最低限必要な発注管理機能について、具体的に見ていきましょう。
発注対象物の管理では、パレット、ラック(棚)、樹脂管や容器といった多様な資材を効率的に扱えることが求められます。商品マスタに品番、品名、規格、単位、標準単価などを登録し、発注時に迅速に検索・選択できる機能が必要です。また、取引先ごとに取り扱い商品が異なるため、仕入先マスタと商品マスタを紐付けて管理できることも重要です。
発注書の生成機能では、システム上で発注内容を入力すると、自動的にPDF形式の発注書が作成されることが望ましいです。発注書には、発注番号、発注日、納期、納品先、商品明細、数量、単価、合計金額などが含まれ、取引先に応じたフォーマットでカスタマイズできると便利です。メールやFAXで発注する企業が多いため、生成したPDFを直接メール送信できる機能や、FAX送信サービスとの連携機能があれば、さらに業務効率が向上します。
発注履歴の管理も重要な機能です。過去にいつ、どの取引先に、何を、いくら発注したかを簡単に検索できることで、発注業務のミスを防ぎ、適切な在庫補充のタイミングを判断できます。また、定期的に発注する商品については、過去の発注データをコピーして新規発注を作成できる機能があると、入力の手間が大幅に削減されます。
納品管理機能の重要性
発注管理と並んでBCP対策に不可欠なのが納品管理機能です。発注した商品が予定通りに納品されているかを確認し、記録することで、在庫の正確性を保ち、取引先とのトラブルを防ぎます。
納品予定管理では、発注時に設定した納期を基に、納品予定の一覧を表示できることが望ましいです。納期が近づいている発注、納期を過ぎている発注を色分けやアラートで知らせる機能があれば、取引先への確認漏れを防げます。特に複数の部署が並行して発注を行っている環境では、全体の納品予定を俯瞰できることが重要です。
納品実績の登録では、実際に納品された日付、数量を記録し、発注数量との差異を管理できることが必要です。一部納品や分納が発生する場合、残数を自動計算し、未納品分を追跡できる機能があると、発注残の管理が容易になります。また、納品時に検品を行い、不良品や数量不足があった場合、その情報をシステムに記録し、取引先への連絡や返品処理に活用できることも重要です。
納品書との照合機能も有用です。取引先から届く納品書の内容とシステム上の発注内容を照合し、相違があればアラートを出す機能があれば、請求書との齟齬を事前に防げます。特に大量の発注を扱う企業では、この照合作業を自動化することで、経理部門の負担を大幅に軽減できます。
在庫管理と請求管理の追加価値
BCP対策の最低要件は発注管理と納品管理ですが、在庫管理と請求管理の機能も追加できれば、平常時の業務効率も大きく向上します。
在庫管理では、納品された商品の入庫処理、出庫処理、在庫数の確認が基本機能です。ストック数と消費数を記録することで、適切な発注タイミングを判断でき、欠品や過剰在庫を防げます。複数の倉庫や拠点がある場合、拠点ごとの在庫数を一元管理できることが重要です。また、安全在庫や発注点を設定し、在庫が一定数を下回ったら自動でアラートを出す機能があれば、発注漏れを防止できます。
請求管理、特に請求書の受領管理は、経理業務の効率化に直結します。納品データと連動して、取引先からの請求書を照合し、金額や数量の相違をチェックできる機能があれば、支払い処理がスムーズになります。請求書の電子データ(PDFやXML)を取り込み、納品実績と自動照合する機能があれば、さらに業務効率が向上します。
これらの機能を一元管理できるシステムであれば、発注から在庫管理、請求処理までの一連の流れをシームレスに処理でき、データの整合性も保たれます。ただし、BCP対策として考える場合、まずは最低限の機能で迅速に導入し、運用しながら段階的に機能を拡張していくアプローチが現実的です。
迅速導入を実現するための準備
SaaS型システムの導入期間を1〜2週間に抑えるためには、事前の準備が重要です。
まず、既存システムからのデータ移行の範囲を最小限に絞ります。過去のすべての発注データを移行しようとすると、データのクレンジングや整形に時間がかかります。緊急時の運用に必要な商品マスタ、取引先マスタ、直近の未納品発注データに絞って移行することで、導入期間を大幅に短縮できます。
業務フローの見直しも同時に行います。既存システムの業務フローをそのままSaaS型システムに持ち込もうとすると、システムの仕様と合わず、カスタマイズが必要になる可能性があります。SaaS型システムの標準機能に合わせて業務フローを調整することで、カスタマイズなしでの導入が可能になり、導入期間とコストを削減できます。
利用者向けのトレーニングも簡潔に行います。全機能を網羅的にトレーニングするのではなく、最も頻繁に使用する発注作業と納品確認に絞って、実際の操作画面を使ったハンズオン形式で行うことが効果的です。操作マニュアルも、A4で数ページ程度の簡潔なものを用意し、いつでも参照できるようにしておくと、スムーズな運用開始につながります。
運用開始後の展開戦略
SaaS型システムを導入した後、段階的に利用範囲を拡大していく戦略も重要です。
初期段階では、特定の商品カテゴリや一部の取引先に限定して運用を開始します。例えば、発注頻度が高い消耗品や、納期管理が重要な商品群から始めることで、システムの有効性を実証し、社内の理解を得やすくなります。この段階で運用上の課題や改善点を洗い出し、システム設定や業務フローを最適化します。
次の段階では、利用部署を拡大します。最初に導入した部署での成功事例を他部署に共有し、横展開を図ります。各部署の業務特性に応じて、必要な機能や権限設定をカスタマイズし、全社的な利用に向けて準備を進めます。この段階で、在庫管理や請求管理などの追加機能の導入も検討します。
最終的には、BCP対策としてだけでなく、平常時の主要システムとしての位置づけも視野に入れます。SaaS型システムの利便性が認められれば、既存の自社開発システムとの役割分担を見直し、将来的にはSaaS型システムへの完全移行も選択肢となります。ただし、これは長期的な視点での検討事項であり、まずはBCP対策としての確実な運用を優先すべきです。
セキュリティとコンプライアンスの考慮
大企業がSaaS型システムを導入する際、セキュリティとコンプライアンスの確認は不可欠です。
データの保管場所について、SaaSベンダーがどこにデータセンターを持っているか確認します。日本国内にデータセンターがある場合、日本の法律が適用され、データの主権が明確になります。また、データのバックアップ体制、暗号化の方式、アクセスログの管理方法なども確認すべき項目です。
アクセス制御については、IPアドレス制限、二要素認証、シングルサインオン(SSO)といった機能が提供されているか確認します。特に社外からのアクセスを制限したい場合や、既存の認証基盤と統合したい場合、これらの機能が重要になります。
コンプライアンス面では、SaaSベンダーがISO27001などの情報セキュリティ認証を取得しているか、個人情報保護法や業界固有の規制に対応しているかを確認します。また、SLA(サービスレベル契約)の内容、特に稼働率の保証、障害時の対応時間、補償内容なども、契約前に詳細を確認すべきです。
費用対効果の評価
BCP対策としてのSaaS型システム導入の費用対効果を評価する際は、単純な導入コストだけでなく、リスク軽減の価値も考慮する必要があります。
初期費用と月額費用は、利用人数や必要な機能によって変動します。一般的に、100名規模の利用であれば、初期費用は数十万円から数百万円、月額費用は数万円から数十万円の範囲になることが多いです。カスタマイズを行わず標準機能のみで運用することで、これらのコストを抑えることができます。
一方、システム停止時の損失額も試算すべきです。1日あたりの発注業務が停止した場合、取引先への納期遅延、生産ラインの停止、機会損失など、間接的な損失も含めると、数百万円から数千万円規模の影響が出る可能性があります。また、取引先との信頼関係が損なわれることによる長期的な影響も考慮する必要があります。
BCP対策の投資は保険のようなものです。緊急事態が発生しなければ、直接的なリターンは得られませんが、万が一の事態に備えることで、企業の存続リスクを大幅に低減できます。さらに、平常時にも利用することで、業務効率化や働き方改革といった副次的な効果も期待できます。
まとめ
既存の自社開発システムをメインに運用しながら、BCP対策としてSaaS型受発注システムを導入することは、投資を抑えながら事業継続性を高める効果的な戦略です。
導入を成功させるためには、まず最低限必要な機能を明確にすることが重要です。発注管理と納品管理に絞り込み、カスタマイズなしで迅速に導入することで、1〜2週間という短期間での運用開始が可能になります。在庫管理や請求管理は、必須ではなく、運用しながら段階的に追加を検討すべきです。
大規模利用を想定する場合、パフォーマンス、ユーザー管理、データエクスポート機能、セキュリティといった観点から慎重にシステムを選定する必要があります。また、平常時から一部の業務で利用し、社員がシステムに慣れておくことで、緊急時にもスムーズに移行できます。
BCP対策は、いつ起こるかわからない緊急事態に備えるものですが、単なる保険ではなく、業務効率化や働き方改革といった平常時のメリットも享受できます。既存システムとSaaS型システムのハイブリッド運用により、柔軟で強靭な業務基盤を構築し、企業の持続的な成長を支える基盤としていくことが、これからの時代に求められています。
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