受注生産・見込み生産・流れ生産を統合管理|多品種生産に対応する工程調整の実践手法

受注生産・見込み生産・流れ生産を統合管理|多品種生産に対応する工程調整の実践手法
製造業において、受注生産・見込み生産・流れ生産という異なる生産形態が混在する環境での生産管理は、極めて高度な調整能力が求められます。特に組立製造と部品製造を並行して行う企業では、従来のガントチャートだけでは対応しきれない複雑な工程調整が日常的に発生しています。
本記事では、多様な生産形態を統合管理し、柔軟な工程調整を実現するための実践的なアプローチを詳しく解説します。
生産形態混在による管理の複雑化
3つの生産形態とその特性
製造業における生産形態は、大きく3つに分類されます。それぞれ管理手法が異なるため、これらが混在する環境では高度な統合管理が必要です。
受注生産(MTO: Make to Order) 顧客からの個別注文を受けてから生産を開始する形態です。産業機械、特注設備、カスタム部品などが該当します。特徴として、顧客仕様への対応が必須で、納期管理が極めて重要になります。在庫リスクは低いものの、リードタイムが長期化しやすく、生産計画の変動が大きいという課題があります。
見込み生産(MTS: Make to Stock) 需要予測に基づいて事前に生産し、在庫として保有する形態です。汎用部品、標準製品、消耗品などが該当します。短納期対応が可能で、生産の平準化がしやすい反面、需要予測の精度が利益を左右し、過剰在庫や欠品のリスクがあります。
流れ生産(連続生産) 一定の生産ラインで連続的に製品を生産する形態です。自動車部品、電子部品、食品などが該当します。生産効率が高く、品質の安定化が図れる一方、段取り替えのロスが大きく、少量多品種には不向きという特性があります。
生産形態混在がもたらす課題
ある機械製造企業では、主力製品を受注生産で対応しつつ、交換部品は見込み生産で在庫し、一部の汎用部品は流れ生産で効率的に製造するという3つの生産形態が同一工場内で混在していました。
この環境では以下のような深刻な問題が発生していました。
まず、生産優先順位の判断が困難という問題です。受注生産の納期遵守、見込み生産の在庫補充、流れ生産の稼働率維持という異なる優先基準が競合し、現場が混乱していました。
次に、設備・人員の配分が非効率という課題です。同じ設備や作業者を3つの生産形態で共有するため、段取り替えが頻発し、稼働率が大幅に低下していました。
さらに、在庫管理の複雑化も問題でした。受注生産用の仕掛品、見込み生産用の完成品在庫、流れ生産用の中間在庫が混在し、正確な在庫把握が困難になっていました。
そして計画変更への対応遅延という課題もありました。受注生産の急ぎ案件が入ると、見込み生産や流れ生産の計画を手動で調整する必要があり、調整に半日以上かかることもありました。
組立製造と部品製造の統合管理
組立と部品の生産特性の違い
組立製造と部品製造では、管理すべきポイントが大きく異なります。
組立製造では、複数部品の同期調達が最重要です。1つでも部品が欠けると組立が停止するため、全部品の納期を揃える必要があります。作業は多工程で、各工程の進捗管理が複雑です。また、組立作業は人手に依存する部分が多く、作業者のスキルや経験が生産性に大きく影響します。
一方、部品製造では、加工精度と品質の安定性が最優先です。機械加工が中心となるため、設備稼働率の最大化が重要で、段取り替え回数の最小化が効率化のカギとなります。
統合管理の実践手法
ある自動車部品メーカーでは、組立ラインと部品加工を以下のように統合管理することで、生産効率を大幅に改善しました。
部品製造の先行計画 組立計画を起点に、必要部品を逆算して生産計画を自動生成します。部品のリードタイムを考慮し、組立開始の2週間前には部品製造を完了するよう計画します。これにより組立ラインの停止を防ぎます。
部品在庫と組立進捗の連動 部品製造の完了情報が即座に組立計画に反映され、リアルタイムで組立可能性を判断できる仕組みを構築しました。部品欠品の予兆を検知すると、自動でアラートを発信し、代替策の検討時間を確保します。
設備・人員の最適配分 組立と部品製造で共用する設備について、負荷を可視化し、ボトルネック設備を特定します。優先度の高い作業に設備を優先配分し、残り時間で見込み生産を実施することで、稼働率を最大化しました。
この統合管理により、部品欠品による組立停止が月8回から月1回以下に減少し、設備総合稼働率が62%から78%に向上、納期遵守率が83%から96%に改善されました。
ガントチャート以外の工程調整手法
ガントチャートの限界
ガントチャートは視覚的に分かりやすく、工程の全体像を把握しやすいという利点があります。しかし、複雑な生産環境では以下のような限界があります。
まず、多品種少量生産では見づらいという問題です。100種類以上の製品を同時に管理すると、画面が見づらくなり実用性が低下します。
次に、制約条件の反映が困難です。設備能力、作業者のスキル、部品在庫などの制約を考慮した調整が手作業となり、非常に時間がかかります。
さらに、計画変更の影響範囲が見えづらいという課題があります。1つの工程を変更したときに、他の工程にどう影響するかが瞬時に把握できません。
そしてリアルタイム性が低いという問題もあります。実績が反映されるまでにタイムラグがあり、常に最新の状況で判断できません。
実践的な工程調整手法
ガントチャート以外の効果的な工程調整手法として、以下の3つが実績を上げています。
1. 優先度マトリクス方式
縦軸に納期、横軸に重要度を配置し、各案件を4つの象限に分類して優先順位を可視化します。
- 第1象限(納期近・重要度高):最優先で対応
- 第2象限(納期近・重要度低):効率的に処理
- 第3象限(納期遠・重要度高):計画的に準備
- 第4象限(納期遠・重要度低):リソース調整に活用
この方式により、現場の判断基準が明確になり、緊急時の判断スピードが向上します。
2. ボトルネック基準の負荷調整
全工程の中で最も能力が制約されるボトルネック工程を基準に、前後の工程を調整します。
ボトルネック工程の稼働率を最大化することを最優先とし、ボトルネック前工程は常にバッファを持たせ、ボトルネック後工程は素早く処理して滞留を防ぎます。
ある金属加工業では、熱処理工程がボトルネックだったため、この工程を基準に前後を調整することで、全体の生産量が23%向上しました。
3. 能力ベースの自動割付
各工程の能力(時間当たり生産量)を数値化し、システムが自動的に最適な割付を計算します。
設備能力、作業者スキル、段取り替え時間などを考慮し、複数の制約条件を同時に満たす計画を数秒で生成します。計画変更時も即座に再計算され、常に実行可能な計画を維持できます。
統合管理を実現するシステム要件
必須となる機能要件
生産形態混在環境で統合管理を実現するためには、以下の機能が必須となります。
マスタの柔軟な設定 製品ごとに生産形態(受注生産/見込み生産/流れ生産)を設定でき、同一製品でも数量や時期によって生産形態を切り替えられる柔軟性が必要です。
部品展開と所要量計算 組立品の生産計画から必要部品を自動展開し、部品の在庫状況を考慮して不足分を発注または製造する計画を自動生成する機能が求められます。
制約条件を考慮した計画立案 設備能力、作業者配置、部品在庫、外注能力などの制約条件を設定し、実行可能な計画のみを提示する機能が重要です。
リアルタイムな進捗管理 製造実績を即座に計画に反映し、遅延や異常を自動検知してアラートを発信する機能が必要です。
複数視点での可視化 ガントチャート、負荷グラフ、優先度マトリクスなど、複数の視点で同じ情報を表示できる機能があると、状況に応じた最適な判断が可能になります。
導入時の注意点
システム導入を成功させるためには、以下の点に注意が必要です。
段階的な導入 いきなり全工程を対象とせず、まず1つの生産ラインや特定の製品群で試行し、効果を確認してから展開範囲を広げることが重要です。
現場の声を反映 システム設計段階から現場の作業者や管理者の意見を積極的に取り入れ、実務に即した仕様にすることで、導入後の定着率が大幅に向上します。
マスタ整備の徹底 製品構成、工程順序、標準時間などのマスタ情報を正確に整備することが、システムの効果を最大化する最重要ポイントです。
教育・訓練の実施 システムの操作方法だけでなく、背景にある生産管理の考え方も含めて教育することで、状況に応じた柔軟な運用が可能になります。
Wikiだるまでできること
Wikiだるまは、中小製造業の受発注・在庫管理に特化したシステムですが、生産管理の基盤となる重要な機能を提供しています。
受注と在庫の完全連動
受注情報と在庫情報がリアルタイムで連動し、受注時点で在庫充足状況を即座に確認できます。部品欠品の予兆を自動検知し、発注タイミングを逃しません。
FAX・CSV・EDI対応
取引先からの注文をFAX-OCRで自動データ化し、手入力の時間を98%削減します。CSV一括登録やEDI連携にも対応し、既存の取引先とシームレスに接続できます。
発注残・受注残の自動管理
分納や部分納品があっても、残数を自動追跡し、どこまで納品したか一目で確認できます。催促の電話対応に追われる時間を大幅に削減します。
アラート・通知機能
在庫不足、納期遅延の予兆を自動検知し、メール・アプリで即座に通知します。問題を未然に防ぎ、トラブル対応時間を80%短縮します。
生産管理システムと組み合わせることで、受注から生産、在庫、出荷までの一貫した管理を実現できます。
まとめ
受注生産・見込み生産・流れ生産が混在する環境での統合管理は、製造業の競争力を左右する重要な課題です。
ガントチャートだけに頼らず、優先度マトリクス、ボトルネック基準の調整、能力ベースの自動割付など、複数の手法を組み合わせることで、より柔軟で実践的な工程調整が可能になります。
組立製造と部品製造を統合管理し、部品の先行計画と在庫連動を実現することで、組立ラインの停止を防ぎ、全体の生産効率を大幅に向上させることができます。
システム導入においては、段階的なアプローチと現場の声の反映、そしてマスタ整備の徹底が成功のカギとなります。
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