商品開発の試作履歴を一元管理|Excel地獄から脱却する情報管理システムの選び方
商品開発の試作履歴を一元管理|Excel地獄から脱却する情報管理システムの選び方
商品開発の現場では、試作を繰り返す中で膨大な情報が蓄積されていきます。しかし多くの企業では、Excelファイルをメールで共有する運用が常態化し、最新版の所在が分からない、過去の試作データが追跡できない、根拠となる添付ファイルが見つからないといった問題が深刻化しています。
本記事では、商品開発における情報管理の課題を整理し、Excel運用から脱却して試作履歴を一元管理するためのシステム選定ポイントを詳しく解説します。
商品開発における情報管理の課題
Excel運用の限界
商品開発部門では、専門性が高く定型化しづらい業務特性から、DXが進みにくい傾向があります。特に試作を繰り返す過程では、以下のような「Excel地獄」に陥りがちです。
バージョン管理の混乱
試作ごとにExcelファイルが更新され、「試作1_最終.xlsx」「試作1_最終_修正版.xlsx」「試作1_最終_本当に最終.xlsx」といったファイルが乱立します。どれが最新版か分からず、古いデータで判断してしまうリスクがあります。
ある食品メーカーでは、試作品の配合データを間違ったバージョンで製造してしまい、1週間分の試作がやり直しになった事例がありました。
履歴の追跡困難
「なぜこの仕様に変更したのか」という経緯が残らず、過去の試作で得られた知見が活かされません。同じ失敗を繰り返したり、既に検証済みの内容を再度試作したりする無駄が発生します。
根拠ファイルの紛失
試験結果、写真、評価レポートなどの根拠となるファイルが、メールの添付や個人フォルダに散在し、必要なときに見つかりません。品質トラブル発生時に、過去の検証データを探すのに数日かかるケースもあります。
部署間の情報共有不全
開発、生産技術、品質管理、資材調達など複数部署が関わる中で、情報が分断されます。誰がどの情報を持っているか分からず、同じ質問を何度も繰り返す非効率が生じます。
書式の増殖と複雑化
試作を重ねるたびに新しいチェック項目が追加され、Excel書式が肥大化します。結果として入力負荷が高まり、記入漏れやミスが増加する悪循環に陥ります。
商品情報管理システムだけでは足りない理由
多くの企業では、全社的な商品情報管理システム(PLM: Product Lifecycle Management)を導入しています。しかし、これだけでは商品開発の試作管理には不十分です。
固定的なデータ構造
PLMシステムは確定した商品情報を管理するために設計されており、試作段階の流動的で可変的なデータ構造には対応しづらい特性があります。
変更の柔軟性が低い
試作過程で「新しい評価項目を追加したい」「このフィールドは今回不要」といったニーズが頻繁に発生しますが、PLMではシステム改修が必要となり、迅速な対応ができません。
部署限定の情報管理が困難
PLMは全社システムのため、開発部門だけで使いたい機密性の高い試作情報を、限定的に管理することが難しい構造になっています。
開発プロセスとの不一致
PLMは量産段階を前提とした設計が多く、試作を繰り返しながら仕様を固めていく開発プロセス特有の使い方には適さないケースがあります。
試作情報管理システムに求められる要件
商品開発の試作プロセスを効率化するためには、以下の要件を満たすシステムが必要です。
1. 柔軟なデータ構造
試作ごとに変化する情報項目
試作1では「温度」「湿度」の2項目だったデータが、試作2では「pH値」「粘度」が追加され、試作3では「色相」「光沢度」も必要になる――このような変化に、プログラミング不要で対応できる柔軟性が必須です。
ノーコード/ローコードツールを活用することで、開発担当者自身が項目を追加・削除でき、システム部門に依頼する時間を削減できます。
レイアウトの自由度
開発担当者の思考プロセスに合わせて、情報の配置や表示順を自由にカスタマイズできることが重要です。画一的な画面構成では、使いにくさから結局Excelに戻ってしまうリスクがあります。
2. 完全な履歴管理機能
変更履歴の自動記録
誰が、いつ、何を変更したかを自動的に記録し、任意の時点の状態を再現できる機能が必要です。「先月の試作3の時点では、この数値は何だったか」という問い合わせに即答できます。
変更理由のコメント機能
数値を変更した際に、その理由や背景をコメントとして残せる機能があると、後から見返したときに経緯が理解できます。暗黙知の形式知化にもつながります。
承認ワークフロー
重要な変更については、上長や関連部署の承認を経てから確定するワークフロー機能があると、品質管理の観点からも安心です。
3. 添付ファイルの一元管理
関連資料の紐付け
試験結果のPDF、製品写真、評価レポートなど、試作に関連するあらゆるファイルを1つの試作レコードに紐付けて保管できる機能が必要です。
全文検索機能
添付されたPDFの内容まで検索できる全文検索機能があると、「以前どこかで見た試験データ」を探す時間が大幅に短縮されます。
バージョン管理
同じ資料の改訂版を上書きではなく別バージョンとして保存し、いつでも過去版を参照できる仕組みが理想的です。
4. 既存システムとの連携
商品マスタの自動連携
全社の商品情報管理システムから、商品コード、商品名、基本仕様などの定数データを自動連携できると、二重入力が不要になります。
API連携の柔軟性
REST APIやWebhookなどの標準的な連携方式に対応し、既存システムとスムーズにデータ交換できることが重要です。
CSVインポート/エクスポート
既存のExcelデータを一括登録したり、分析用にデータを出力したりする際に、CSV形式での入出力が可能だと便利です。
5. アクセス権限の細かい制御
部署単位での情報制限
開発部門内でのみ共有したい機密情報と、関連部署にも公開する情報を明確に区別できる権限設定が必要です。
試作段階ごとの公開範囲
初期試作は開発チームのみ、中間試作は生産技術にも共有、最終試作は全関係部署に公開、といった段階的な公開制御ができると理想的です。
閲覧のみ・編集可能の区別
特定のユーザーには閲覧権限のみを付与し、編集は担当者に限定することで、誤操作や不正な変更を防止できます。
システム選定の3つのアプローチ
商品開発の試作情報管理システムを導入する際、主に3つのアプローチがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自社に最適な方法を選択しましょう。
アプローチ1: SaaSサービスの活用
メリット
- 導入スピードが速い: 最短1週間程度で利用開始が可能
- 初期コストが低い: サーバー構築不要で、月額料金のみで始められる
- 継続的な機能改善: ベンダーが定期的に新機能を追加・改善してくれる
- セキュリティ対策済み: データバックアップや障害対策がベンダー側で実施される
デメリット
- カスタマイズ制限: サービス仕様の範囲内でしか対応できない
- データ保管場所: クラウド上にデータを置くことへの社内承認が必要な場合がある
- ベンダー依存: サービス終了リスクや価格改定の影響を受ける
適している企業
- 100名以下の小規模チームでまず試したい企業
- IT部門のリソースが限られている企業
- 迅速な導入を最優先する企業
アプローチ2: パッケージソフトの導入
メリット
- オンプレミス運用可能: 社内サーバーにインストールでき、データを社内管理できる
- 買い切り型も選択可: サブスクではなく買い切りで導入できる製品もある
- カスタマイズ対応: ベンダーサポートによる一定のカスタマイズが可能
デメリット
- 初期コストが高い: ライセンス費用、サーバー費用、構築費用が必要
- 導入期間が長い: 要件定義から稼働まで3〜6ヶ月程度かかる
- 運用負荷: 自社でサーバー管理やバックアップ対応が必要
適している企業
- セキュリティポリシー上、クラウド利用が難しい企業
- 既存の社内インフラを活用したい企業
- 長期的に運用コストを抑えたい企業
アプローチ3: ノーコード/ローコードツールでの構築
メリット
- 高い柔軟性: 自社の業務プロセスに完全に合わせた設計が可能
- 内製化できる: IT部門や現場担当者自身で改修・拡張できる
- 段階的な拡張: 小さく始めて、必要に応じて機能を追加していける
- 他システム連携: APIを活用して既存システムと柔軟に連携できる
デメリット
- 学習コストが必要: ツールの使い方を習得する時間が必要
- 設計力が求められる: 業務フローの整理やデータ設計のスキルが必要
- サポート範囲: 構築したアプリのサポートは基本的に自社対応
適している企業
- 業務プロセスが特殊で、既製品では対応しきれない企業
- IT人材がいて内製化を推進したい企業
- 将来的に機能拡張を続けたい企業
主なツール例
- kintone(サイボウズ)
- Microsoft Power Apps
- Salesforce Platform
- AppSheet(Google)
導入プロジェクトの進め方
システム選定から導入までを成功させるためには、計画的なプロジェクト推進が重要です。
フェーズ1: 現状整理と要件定義(1〜2ヶ月)
業務フローの可視化
現在の試作プロセスをフローチャートで図示し、どこで情報が発生し、誰に共有され、どのように蓄積されているかを明確にします。Excel運用の課題も具体的に洗い出します。
ステークホルダーへのヒアリング
開発担当者だけでなく、生産技術、品質管理、資材調達など関連部署の担当者にもヒアリングを実施します。それぞれの立場からの要望を収集します。
優先順位の設定
すべての要望を初期導入で実現しようとせず、Must要件とWant要件を明確に区別します。特に試作履歴管理、添付ファイル管理、アクセス権限制御はMust要件となるケースが多いでしょう。
フェーズ2: ベンダー選定と提案評価(1〜2ヶ月)
RFP(提案依頼書)の作成
要件定義の内容を基に、ベンダーに提示する提案依頼書を作成します。業務フロー、必要機能、制約条件、評価基準などを明記します。
複数ベンダーからの提案収集
最低3社以上から提案を受け、機能、価格、導入実績、サポート体制などを多角的に比較します。デモンストレーションを実施してもらい、実際の操作感を確認することが重要です。
評価基準に基づく採点
感覚ではなく、事前に設定した評価基準に基づいて定量的に採点します。例えば、機能適合度40点、価格30点、導入実績15点、サポート15点、といった配点で評価します。
フェーズ3: 試験導入とカスタマイズ(2〜4ヶ月)
スモールスタート
いきなり全部署で導入せず、まず1つの開発チームでパイロット運用を開始します。実際の試作案件で使いながら、課題を洗い出します。
データ移行計画
既存のExcelデータを新システムに移行する際は、**データクレンジング(整形・統一)**が必要です。移行前に不要データを削除し、表記ゆれを統一します。
カスタマイズと改善
パイロット運用で見えてきた課題に対して、画面レイアウトの調整、入力項目の追加、ワークフローの見直しなどのカスタマイズを実施します。
フェーズ4: 本格展開と定着化(3〜6ヶ月)
段階的な展開
パイロット部署での成功を確認したら、段階的に他部署へ展開します。一度に全部署で開始すると、サポート対応が追いつかなくなります。
操作トレーニングの実施
システムの操作方法だけでなく、「なぜこのシステムを導入したのか」という背景や目的も共有することで、利用率が向上します。
運用ルールの策定
データの入力タイミング、承認フロー、バックアップ頻度など、明確な運用ルールを文書化します。担当者が変わっても運用が継続できる体制を構築します。
効果測定と改善
導入後3ヶ月時点で効果測定を実施します。「情報検索時間が50%短縮」「試作データの入力ミスが80%減少」など、定量的な効果を可視化することで、経営層への報告資料にもなります。
受発注・在庫管理の基盤整備も重要
商品開発の情報管理と並行して、受発注・在庫管理の基盤を整備することも、製造業DXの重要な要素です。
試作材料の調達効率化
新商品開発では、通常の生産とは異なる特殊な材料を少量調達する必要があります。この試作材料の発注・在庫管理が煩雑になりがちです。
試作材料の発注残管理
「あの材料、いつ届くんだっけ?」という問い合わせに即答できるよう、発注残を可視化することで、試作スケジュールの遅延を防ぎます。
在庫との連動
試作で使用した材料の数量を自動的に在庫から引き落とし、リアルタイムで残量を把握できる仕組みがあると、次の試作計画が立てやすくなります。
関連部署との情報共有
商品開発の情報管理システムと、受発注・在庫管理システムが連携することで、さらに効率が向上します。
生産移管時のデータ連携
試作が完了し量産に移行する際、開発部門から生産部門へスムーズに情報を引き継げる仕組みが理想的です。
品質トラブル時の追跡
市場でトラブルが発生した際、「この製品は試作何号の仕様で製造したものか」を即座に特定できることが、迅速な対応につながります。
Wikiだるまでできること
Wikiだるまは、製造業の受発注・在庫管理に特化したシステムです。商品開発の試作管理には直接対応していませんが、開発から量産への移行を支える基盤機能を提供します。
試作材料の発注管理
試作に必要な特殊材料の発注をFAX-OCR自動取込やCSV一括登録で効率化します。手入力時間を98%削減し、発注ミスを防ぎます。
在庫のリアルタイム把握
試作で使用する材料の在庫をリアルタイムで確認でき、「在庫不足で試作が止まる」リスクを最小化します。在庫不足アラートで事前に補充できます。
発注残の自動追跡
発注した材料が「いつ届くか」を自動追跡し、試作スケジュールとの整合性を確認できます。納期遅延の予兆も早期に検知します。
関連部署との連携
開発部門、生産部門、資材部門が同じシステムで情報を共有することで、部署間の連携がスムーズになり、量産移行時の情報断絶を防ぎます。
商品開発の情報管理システムと組み合わせることで、試作から量産までの一貫した情報管理を実現できます。
まとめ
商品開発における試作情報管理は、Excel運用の限界を超え、専用システムでの一元管理が競争力向上の鍵となります。
システム選定では、柔軟なデータ構造、完全な履歴管理、添付ファイルの一元管理、既存システム連携、細かいアクセス権限制御という5つの要件を重視しましょう。
SaaSサービス、パッケージソフト、ノーコード/ローコードツールという3つのアプローチから、自社の状況に最適な方法を選択することが重要です。
導入プロジェクトは、現状整理、ベンダー選定、試験導入、本格展開という4つのフェーズを計画的に進めることで、成功確率が高まります。
製造業のDXは、商品開発の情報管理と受発注・在庫管理の両面から取り組むことで、最大の効果を発揮します。
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