プロジェクト別の発注管理システム導入ガイド|Excel発注から脱却して原価を見える化する方法

プロジェクトごとの仕入額が見えない恐怖
設計・製作・工事を請け負う企業にとって、プロジェクトの収益性を把握することは経営の生命線です。しかし、受注時に見積もった原価と、実際の仕入額が大きく乖離していることに、プロジェクト完了後に気づく——このような事態が頻発していませんか。
ある設備工事会社では、案件ごとにExcelで発注リストを作成し、10社ほどの商社にPDFをメール送付して発注していました。しかし、各商社からの請求書が届くのはプロジェクト完了後。その時点で初めて「想定より30%も仕入額が高かった」と判明し、赤字プロジェクトになっていたのです。
従業員7名の小規模な会社であれば、社長が全てのプロジェクトの収支を頭の中で管理できるかもしれません。しかし案件が増え、発注先が増え、機器の種類が多様化していけば、記憶だけでの管理は不可能になります。プロジェクトの途中で「今この案件はいくら使っているのか」が分からない状態は、経営判断を完全に失わせるのです。
Excel発注の5つの致命的な欠陥
Excelで発注リストを作成し、PDFをメール送付する運用は、一見シンプルで手軽に見えます。しかし、この方法には見過ごせない欠陥が潜んでいます。
欠陥1:発注時点で仕入額が確定しない
Excelで発注リストを作っても、そこに記載されているのは「希望数量」だけです。実際の単価や合計金額は、商社からの返答を待たなければ分かりません。
返答が来るまでに数日かかることもあり、その間はプロジェクトの原価が「不明」の状態が続きます。複数の商社に分散発注している場合、全ての回答が揃うまで1週間以上かかることも珍しくありません。その間、次の発注判断ができず、工事スケジュールにも影響します。
欠陥2:発注履歴が散逸してプロジェクト全体が見えない
Excelファイルは担当者のPCに保存され、メールは各自の受信箱に残ります。あるプロジェクトで「これまでに何をいくら発注したか」を確認しようとすると、複数のExcelファイルを開き、過去のメールを検索し、手作業で集計しなければなりません。
特に問題なのが、複数の担当者が並行して発注している場合です。Aさんが発注した機器とBさんが発注した機器が重複していても、気づくのは請求書が届いた後——このような無駄な発注が頻発します。
欠陥3:商社ごとの発注状況が把握できない
10社の商社と取引している場合、どの商社にいくら発注しているか、支払いサイトはどうなっているか、未払いの請求はないか——これらを一元管理できなければ、資金繰りが破綻します。
Excelでは「このプロジェクトで商社Aにいくら発注したか」は分かっても、「今月、商社Aに全プロジェクト合計でいくら支払うのか」は簡単に把握できません。資金計画を立てるには、全てのExcelファイルとメールを洗い出して集計するしかないのです。
欠陥4:発注ミスの発見が遅れる
PDFをメールで送付する方式では、誤った商品コード、間違った数量、異なる仕様——こうした発注ミスに気づくのは、商社から「この商品は在庫がありません」「仕様が不明です」という返信が来た時です。
ミスに気づいてから訂正のメールを送り、再度確認を待つ——このやり取りで数日を無駄にします。工事のスケジュールがタイトな場合、この数日の遅れが致命的になることもあるのです。
欠陥5:過去の発注データが資産にならない
同じような案件を繰り返し受注している場合、過去の発注データは貴重な資産です。「前回のプロジェクトでは、どの機器をどの商社からいくらで調達したか」が分かれば、次回の見積もり精度が大幅に向上します。
しかしExcelとメールでの管理では、過去データの検索と分析が困難です。「去年の同じような案件のExcelファイルはどこだっけ」と探し回り、見つからなければ記憶に頼って見積もりを作る——この非効率な運用を繰り返すことになります。
プロジェクト別原価管理システムの3つの必須機能
プロジェクト別に発注を管理し、仕入額をリアルタイムで把握するシステムには、最低限3つの機能が必要です。
必須機能1:Excelデータの一括取り込み
既にExcelで発注リストを作成しているなら、そのExcelファイルをシステムに取り込める機能が必須です。一件ずつ手入力でシステムに登録していたのでは、導入のハードルが高すぎます。
理想的なのは、Excelの列(商品コード、商品名、数量、発注先など)をシステムの項目にマッピングする機能です。一度マッピングを設定すれば、次回からはExcelをアップロードするだけで自動的に発注データが登録される——この手軽さがあれば、現場の抵抗も最小限になります。
Excelのフォーマットが案件ごとに微妙に異なる場合でも、柔軟にマッピングを調整できるシステムなら、全てのプロジェクトで活用できます。
必須機能2:プロジェクト単位での原価集計
システム上でプロジェクトを作成し、そのプロジェクトに紐づけて発注データを登録していく——この基本構造があれば、プロジェクトごとの仕入額がリアルタイムで集計されます。
画面上で「プロジェクトA:現在の仕入額300万円」「プロジェクトB:現在の仕入額150万円」と表示されれば、経営者は一目で各案件の収支状況を把握できます。見積額と実際の仕入額を並べて表示できれば、原価超過のリスクも早期に察知できます。
さらに進んだシステムなら、発注済みだが未納品の機器、納品済みだが未請求の機器を区別して表示し、「確定した原価」と「予定原価」を分けて管理できます。
必須機能3:商社への発注データ送信
システム上で発注データを確定したら、商社へ自動的に発注通知が送られる——この機能があれば、PDFをメール添付する手間がゼロになります。
最もシンプルな実装は、発注データをPDF化してメール自動送信する機能です。これだけでも、担当者がPDFを作成してメールを書く工数は削減されます。
さらに理想的なのは、商社がシステムにログインして発注内容を確認できるポータル機能です。発注と同時に商社の画面に通知が表示され、商社は納期や単価を入力して回答する——この双方向のやり取りがシステム上で完結すれば、メールのやり取りは完全に不要になります。
スモールスタートで始める3ステップ導入法
予算に余裕がない場合でも、段階的にシステムを導入していく方法があります。
ステップ1:まず1プロジェクトで試験運用(初月)
いきなり全プロジェクトをシステム化するのではなく、次に始まる案件を1件だけシステムで管理してみます。従来通りExcelで発注リストを作成し、それをシステムに取り込む。発注データを商社にメール送信する。仕入額を随時入力して集計する——この一連の流れを実際に体験することで、システムの使い勝手と効果を検証できます。
1プロジェクトであれば、もしシステムが使いにくくても、従来の方法に戻すことは容易です。逆に効果を実感できれば、他のプロジェクトにも展開する自信が持てます。
ステップ2:主要3プロジェクトに拡大(2〜3ヶ月目)
試験運用で問題がなければ、現在進行中のプロジェクトのうち規模の大きい3件をシステムに移行します。この段階で、複数プロジェクトを並行管理する際の課題が見えてきます。
「プロジェクトAとBで同じ機器を発注しているから、まとめて発注すれば単価が下がる」「プロジェクトCは原価が予算を超過しそうだから、仕様変更を検討すべきだ」——こうした気づきが得られれば、システム導入の価値を実感できるでしょう。
ステップ3:全プロジェクトに展開(4ヶ月目以降)
3プロジェクトでの運用が安定したら、新規案件は全てシステムで管理します。従業員7名の会社であれば、年間で受注するプロジェクト数はせいぜい10〜20件程度でしょう。全案件がシステム上にあれば、経営会議で「現在進行中の全プロジェクトの収支状況」を一覧表示でき、意思決定のスピードが格段に上がります。
過去案件のExcelデータも、時間のある時に少しずつシステムに登録していけば、発注履歴データベースが蓄積されていきます。1年後には「過去の類似案件の原価データをもとに、精度の高い見積もりを作成できる」状態が実現するのです。
発注先10社との関係を損なわずにシステム化する方法
商社との長年の取引関係を大切にしながら、システム化を進めることは可能です。
方法1:発注方法は変えずにデータだけ蓄積
最初の段階では、商社への発注方法は従来通りPDFメール送付のままで構いません。システムから自動生成されたPDFをメールに添付するだけでも、発注履歴がシステムに残り、プロジェクト別集計が可能になります。
商社側は何も変わらないため、「新しいシステムを使ってください」と依頼する必要もありません。自社内部の業務効率化として、静かにシステムを導入できます。
方法2:主要3社にポータル利用を提案
10社のうち、発注金額が最も大きい上位3社には、「発注・回答がもっと効率化できるシステムを導入したので、よければ使ってみませんか」と提案してみましょう。
商社にとっても、発注内容を紙やPDFで確認するより、システム上で確認してそのまま回答できる方が便利です。特に納期回答が早くなることを強調すれば、協力してもらえる可能性は高いでしょう。
方法3:見積依頼の効率化から始める
発注の前段階である「見積依頼」からシステム化するのも有効です。プロジェクトの機器リストをシステムに登録し、複数の商社に一括で見積依頼を送信する。各商社からの見積回答もシステム上で受け取り、比較表を自動生成する——この仕組みがあれば、最適な発注先選定も効率化されます。
見積段階でシステムを使うことに慣れてもらえば、その後の正式発注もシステム経由で受け入れてもらいやすくなります。
従業員7名でも回せるシンプル設計の重要性
小規模企業にとって、複雑で高機能なシステムは逆効果です。必要最低限の機能に絞り、誰でも直感的に使えるシンプルさこそが成功の鍵です。
シンプル設計の原則1:画面数を最小限に
「プロジェクト一覧」「発注登録」「原価集計」——この3つの画面だけで基本業務が完結するシステムが理想です。階層の深いメニュー構造、複雑な権限設定、使わない機能の山——これらは小規模企業には不要です。
新人が入社しても、30分の説明で使えるようになる——このレベルのシンプルさがあれば、教育コストもゼロになります。
シンプル設計の原則2:Excel感覚で操作できる
既にExcelで発注リストを作成している担当者にとって、システムの入力画面がExcelのセルと同じような感覚で操作できることは重要です。
商品コードを入力すると商品名が自動表示される、数量を入力すると合計金額が自動計算される、発注先を選択すると過去の取引単価が参照される——このようなExcelマクロで実現していた便利機能を、システム上でも再現できれば、移行のハードルは低くなります。
シンプル設計の原則3:スマホでも確認できる
経営者や現場担当者が外出先で「今のプロジェクトの原価はいくらだっけ」と確認したい時、スマホで見られることは大きな価値です。
入力作業はPCで行うとしても、閲覧だけならスマホで十分です。プロジェクト一覧と原価集計がスマホで見られれば、いつでもどこでも経営状況を把握できます。
情報収集段階で確認すべき5つのポイント
具体的な要件が固まっていない段階でも、システムベンダーとの初回面談で確認すべき重要なポイントがあります。
ポイント1:Excelインポートの柔軟性
「当社のExcelフォーマットでもインポートできますか」と、実際のExcelファイルを見せて確認しましょう。「弊社の標準フォーマットに合わせてください」と言われたら、その製品は見送るべきです。
既存のExcelフォーマットをそのまま使えるシステムなら、業務フローを変更する必要がなく、導入がスムーズに進みます。
ポイント2:プロジェクト集計の自由度
「プロジェクトごとの仕入額集計」だけでなく、「商社ごとの発注額集計」「月別の支払予定集計」「機器カテゴリ別の原価比較」——こうした多角的な集計が可能かを確認しましょう。
システムが固定的な集計しかできなければ、結局Excelに出力して加工する羽目になります。柔軟な集計・分析機能があるシステムを選ぶべきです。
ポイント3:カスタマイズ不要で使える範囲
「カスタマイズなしで、どこまで使えますか」という質問は重要です。標準機能だけで要件の80%が満たせるなら、残り20%は運用でカバーすることも検討できます。
逆に「御社専用にカスタマイズします」と最初から言われたら、費用が膨らむ可能性が高いです。スモールスタートを希望するなら、標準機能が充実した製品を選びましょう。
ポイント4:サポート体制の手厚さ
従業員7名の会社に専任のシステム管理者を置く余裕はありません。「操作が分からない」「エラーが出た」という時に、すぐに相談できるサポート体制があるかを確認しましょう。
電話サポート、メールサポート、リモート操作による問題解決——これらが月額料金に含まれているシステムなら、安心して導入できます。
ポイント5:導入後の追加費用の透明性
初期費用と月額費用だけでなく、「ユーザーが増えたらいくらか」「データ量が増えたらいくらか」「機能追加を依頼したらいくらか」——これらの追加費用体系を明確に示してもらいましょう。
「後から思わぬ費用が発生した」という事態を避けるため、料金体系の透明性は極めて重要です。
まとめ:Excel発注からの脱却は今すぐ始められる
プロジェクトごとに発注機器が変化し、10社の商社にPDFメールで発注する運用——このやり方で事業が回っているうちは、問題の深刻さに気づきにくいものです。しかし、プロジェクト完了後に「思ったより原価がかかっていた」と気づいても、後の祭りです。
受発注管理システムの導入は、決して大がかりなプロジェクトである必要はありません。1プロジェクトから始め、Excelを取り込み、原価をリアルタイムで見える化する——この小さな一歩が、経営の透明性を劇的に高めます。
予算がなくても、スモールスタートで始められる。要件が固まっていなくても、ベンダーと対話しながら方向性を決められる。従業員7名の小規模企業だからこそ、シンプルで柔軟なシステムが適している——この現実を理解しているベンダーを選べば、受発注管理の改革は確実に成功するのです。
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