自動車販売業の3システム分断を解決|在庫ロケーション管理とExcel納車表からの脱却

自動車販売業が陥る「3システム分断」の罠と、Excel納車管理表から脱却する在庫ロケーション管理
自動車販売業では、販売管理は「JOCAR」、整備管理は「ブロードリーフ」、会計は「TKC」と、業務ごとに異なるシステムを使うのが一般的です。しかしこの「3システム分断」が、売掛金の一元管理を困難にし、在庫車両のロケーション把握を属人化させています。
さらに深刻なのが、納車管理表をExcelで作成し、レジ計算を手作業で行っている現状です。この記事では、自動車販売業特有のシステム課題と、既存システムを活かしたまま在庫管理とPOSレジを効率化する実践的アプローチを解説します。
「3システム分断」が引き起こす自動車販売業の3つの課題
自動車販売業では、販売・整備・会計という3つの業務領域で専門システムを使い分けるのが業界標準です。しかしこの構造が、思わぬ業務課題を生み出しています。
課題1:販売売掛と整備売掛を一元的に見られない
顧客A社は、先月新車を1台購入し(販売売掛200万円)、今月その車の定期点検を実施しました(整備売掛3万円)。経営者が「A社の未収金はいくらか」を確認したい場合、どうすればいいでしょうか。
現状では、JOCARで販売売掛200万円を確認し、ブロードリーフで整備売掛3万円を確認し、手動で合算して「203万円」と計算する必要があります。顧客が100社あれば、この作業を100回繰り返すことになります。
特に問題なのが、月末の売掛金回収管理です。「今月の回収予定額は?」「どの顧客の入金が遅れているか?」を把握するには、2つのシステムからデータを出力し、Excelで突合せる作業が必要です。経理担当者にとって、月末はこの作業だけで数時間を消費する状況です。
会計ソフトのTKCに両方のデータを吸い上げれば一元管理できますが、TKCは会計処理用のシステムであり、「顧客別の売掛管理」「入金消込」といった営業管理機能は弱いです。結局、営業担当者は2つのシステムを行き来する運用から脱却できません。
課題2:在庫車両のロケーション把握が属人化
自動車販売業の在庫管理で最も重要なのが「ロケーション情報」、つまり「どの車両がどこにあるか」です。展示場A、展示場B、第二駐車場、提携駐車場など、複数の保管場所に分散している車両を、瞬時に把握できなければ商談に支障が出ます。
ある中古車販売店では、顧客から「このセダンを見たい」と問い合わせがあった際、営業担当者が「どこに置いたか分からない」と20分間探し回る事態が発生しました。結局見つからず、顧客を待たせた挙句に「後日改めてご案内します」と謝罪する羽目になりました。
JOCARには車両の在庫情報は登録されていますが、ロケーション情報は「備考欄にテキストで入力」する程度です。「展示場B」と入力した車両を検索する機能はなく、一覧を目視で確認するしかありません。
結果として、ベテラン営業担当者の「記憶」に依存する運用になります。「あの白いセダンは確か第二駐車場の奥だったはず」という暗黙知が業務の前提になり、新人営業担当者は車両を探すだけで30分以上かかります。
課題3:長期在庫の把握ができず機会損失
自動車販売業において、在庫車両の回転率は利益率に直結します。仕入れから3ヶ月以内に販売できれば健全ですが、6ヶ月以上売れ残ると「長期在庫」として値引き販売や業者オークション出品を検討する必要があります。
しかし現状のJOCARでは、「仕入れから何ヶ月経過したか」を自動計算する機能がありません。毎月、在庫一覧をExcelに出力し、仕入日から現在までの経過日数を手動計算して、「この車両は5ヶ月経過、あの車両は7ヶ月経過」と確認する作業が必要です。
ある販売店では、長期在庫の把握が遅れたことで、仕入れから8ヶ月経過した車両が放置され、最終的に50万円の値引きで損失を出しました。仕入れ時点で適正価格だったものが、8ヶ月間の保管コストと市場価値の低下で赤字商品に転落したのです。
長期在庫を早期に発見し、6ヶ月時点で対策を打てば、こうした損失は防げます。しかしExcel手作業では、月1回の確認が限界で、リアルタイムな在庫管理は不可能です。
Excel納車管理表が生む「納車漏れ」と「二重手配」のリスク
自動車販売業で最も神経を使う業務が「納車管理」です。契約から納車までの間に、車庫証明取得、自動車税の手続き、任意保険の加入、車検整備、納車日の調整など、複数のタスクが並行して進行します。
Excel納車管理表の3つの限界
多くの販売店が、Excel納車管理表で顧客ごとの進捗を管理しています。しかしこの運用には、以下の限界があります。
限界1:リアルタイム更新ができない 営業担当者Aが「車庫証明取得完了」と入力している間に、営業担当者Bが同じExcelファイルを開こうとすると「他のユーザーが使用中です」とエラーが出ます。Excelは同時編集に弱いため、結局は担当者ごとに別ファイルで管理し、週1回の営業会議で情報を統合する運用になります。
この1週間のタイムラグが、納車遅延を引き起こします。車庫証明が取れたのに営業担当者が気づかず、整備工場への発注が1週間遅れるケースが頻発します。
限界2:アラート機能がない 納車予定日の3日前になっても車検整備が完了していない場合、本来なら緊急対応が必要です。しかしExcel納車管理表は「能動的に確認しないと気づかない」ため、納車前日になって「まだ整備が終わっていない!」と慌てる事態が発生します。
システム化されていれば、納車予定日の5日前に「未完了タスクがあります」とアラートが出ますが、Excelにはそうした機能がありません。担当者が毎日Excel表を確認し、自分で期日を計算する必要があります。
限界3:過去データの検索ができない 顧客から「去年納車した時の任意保険はどこで入りましたか?」と問い合わせがあった場合、過去のExcel納車管理表を探す必要があります。しかし昨年度のファイルは別フォルダに保存されており、検索に10分以上かかります。
システム化されていれば、顧客名で検索すれば過去の納車履歴が瞬時に表示されますが、Excelファイルが年度ごと・担当者ごとに分散していると、検索そのものが困難です。
POSレジがない自動車販売店の「お金の計算ミス」
自動車販売業では、車両代金以外にも、オプション品、登録代行費用、リサイクル料金、自動車税など、複数の費目を合算して請求します。さらに値引き、下取り車の相殺、ローン頭金の控除など、複雑な計算が必要です。
手作業計算が招く3つのトラブル
トラブル1:計算ミスによる請求額の相違 営業担当者が電卓で計算した結果、車両代金150万円+オプション30万円+諸費用20万円=200万円と請求したが、実際には値引き10万円を引き忘れており、正しくは190万円だった。顧客から「見積もりと金額が違う」とクレームが入り、再計算と謝罪対応に追われます。
月間20台を販売する店舗で、5%の計算ミスが発生すると、年間12件のトラブルです。1件あたりの対応に1時間かかるとすれば、年間12時間が無駄な作業に消費されます。
トラブル2:現金管理の不一致 頭金として現金30万円を受け取ったが、レジ記録がないため、誰がいつ受け取ったか分からなくなる。月末の現金実査で不一致が発覚し、原因究明に数時間を費やす事態が頻発します。
POSレジがあれば、入金と同時にレシート発行・データ記録が行われ、後から「この30万円は何の入金だったか」と悩む必要がありません。
トラブル3:会計データへの転記漏れ 現金で受け取った頭金を、TKCの会計システムに転記し忘れるケースがあります。実際には入金されているのに、会計上は未入金のまま残り、売掛金残高がずっと合わない状態が続きます。
POSレジと会計システムが連携していれば、入金と同時に会計データに反映され、転記漏れは発生しません。
JOCAR・ブロードリーフ・TKCを「そのまま活かす」システム設計
既存の販売管理システム・整備管理システム・会計ソフトをすべて入れ替えるのは、莫大なコストと移行リスクを伴います。しかし「在庫管理」と「POSレジ」という2つの機能だけを外部システムで補強すれば、既存システムを活かしたまま業務効率化が実現できます。
4システム連携の設計パターン
システム1:JOCAR(販売管理) 車両の仕入れ・販売・見積作成など、販売管理のコア業務は引き続きJOCARで行います。顧客マスタや車両マスタもJOCARで管理します。
システム2:ブロードリーフ(整備管理) 車検・点検・修理などの整備業務は引き続きブロードリーフで行います。整備売掛金もブロードリーフで管理します。
システム3:新・在庫管理システム(ロケーション管理+納車管理) JOCARから車両データをCSV出力し、在庫管理システムにインポートします。在庫管理システムでは、各車両のロケーション情報(展示場A、第二駐車場など)を登録し、長期在庫を自動検知します。納車管理機能も統合し、Excel納車管理表を置き換えます。
システム4:POSレジ+会計連携 頭金・現金支払いはPOSレジで処理し、自動的にTKCに連携します。販売売掛と整備売掛の合計を、POSレジ画面で一元表示する機能も実装します。
データ連携の実装方法
連携パターン1:CSV連携(初期費用を抑える場合) JOCARから車両データをCSV出力し、在庫管理システムにインポートします。逆に、在庫管理システムでの納車完了情報をCSV出力し、JOCARにインポートします。月1回の締め処理で十分な場合、この方法が最もコスト効率的です。
連携パターン2:API連携(リアルタイム性が必要な場合) JOCARがAPIに対応していない場合でも、中間データベースを経由することでリアルタイム連携が可能です。JOCARのデータベースを定期的に読み取り、在庫管理システムに自動反映させる設計です。
ただしこの方法には開発費用がかかるため、まずはCSV連携でスタートし、運用しながら「本当にリアルタイム連携が必要か」を見極めるのが賢明です。
在庫ロケーション管理システムの3つの必須機能
在庫管理システムを選定する際、「在庫数を管理できます」という製品は多数ありますが、自動車販売業に必要なのは「在庫数」ではなく「ロケーション情報」です。
必須機能1:マップ表示によるロケーション管理
展示場A、展示場B、第二駐車場など、複数の保管場所をマップ上に配置し、各エリアに何台の車両があるかを視覚的に表示します。「白いセダンを探している」場合、画面上で「展示場B・区画3」とすぐに分かります。
理想的なのは、スマートフォンで操作できることです。営業担当者が顧客と一緒に展示場を歩きながら、スマホで「この車両の詳細情報」を確認できれば、オフィスに戻って資料を探す手間が省けます。
必須機能2:長期在庫の自動アラート
仕入日から現在までの経過日数を自動計算し、「90日以上経過した車両」を長期在庫としてアラート表示します。週次で長期在庫レポートをメール送信する機能があれば、経営者がリアルタイムで在庫状況を把握できます。
さらに進んだシステムでは、長期在庫の予測値引き額を自動計算します。「この車両は仕入れから5ヶ月、通常なら10万円値引きで売れる」といった判断材料を提供します。
必須機能3:車両移動履歴の記録
車両は、仕入れ時は提携駐車場、整備後は展示場A、契約後は第二駐車場、と複数回移動します。この移動履歴をすべて記録し、「いつ・誰が・どこからどこに移動させたか」をトレースできる機能が必要です。
「この車両はどこにあるか」という問い合わせに、「3日前に展示場Aから第二駐車場に移動しました」と即答できれば、顧客を待たせずに済みます。
自動車販売業向けPOSレジの選定基準
自動車販売業では、コンビニや飲食店のようなバーコード読み取り式POSレジは不要です。必要なのは「複雑な計算を正確に行い、会計システムに連携する」機能です。
選定基準1:多費目対応
車両代金、オプション品、登録代行費用、リサイクル料金、自動車税など、複数の費目を入力できる必要があります。それぞれに税率が異なる場合もあるため、費目ごとの税率設定が可能な製品を選びます。
選定基準2:値引き・相殺処理
値引き額、下取り車の相殺額、ローン頭金の控除など、複雑な相殺処理に対応できる必要があります。単純な「商品合計-値引き」だけでなく、「下取り車100万円と新車200万円の差額100万円を現金で受領」といった計算が可能な製品を選びます。
選定基準3:TKC連携
POSレジで入力した入金データを、TKCにCSVまたはAPI連携で自動送信できる製品を選びます。手動転記が必要な製品では、結局は転記漏れのリスクが残ります。
補助金を活用した初期費用削減
在庫管理システムとPOSレジの導入には、IT導入補助金やものづくり補助金が活用できる可能性があります。
IT導入補助金の活用
IT導入補助金は、中小企業がITツールを導入する際に、費用の最大1/2(上限450万円)を補助する制度です。在庫管理システムやPOSレジが対象になる可能性があります。
ただし申請には、IT導入支援事業者の登録製品を選ぶ必要があります。システム選定の際に「IT導入補助金の対象製品か」を確認することが重要です。
ものづくり補助金の活用
在庫管理の効率化が生産性向上につながる場合、ものづくり補助金の対象になる可能性もあります。特に「長期在庫の削減による資金効率向上」といった具体的な効果を示せれば、採択の可能性が高まります。
補助金申請には専門的な知識が必要なため、税理士や中小企業診断士に相談することを推奨します。
初期費用を抑える「段階的導入」の実践
在庫管理とPOSレジを同時に導入するのではなく、段階的に進めることで初期費用とリスクを抑えられます。
フェーズ1:在庫ロケーション管理のみ導入(初期費用50万円、月額5万円)
まず最も課題の大きい「在庫ロケーション管理」だけを導入します。JOCARからCSVで車両データを出力し、在庫管理システムに登録します。各車両のロケーション情報を入力し、長期在庫アラート機能を設定します。
このフェーズで、「どの車両がどこにあるか瞬時に分かる」「長期在庫を早期発見できる」という効果を実感します。投資対効果が明確になれば、次のフェーズへの投資判断がしやすくなります。
フェーズ2:納車管理機能を追加(月額+3万円)
在庫管理が安定したら、Excel納車管理表をシステム化します。契約から納車までのタスクをシステムに登録し、進捗を可視化します。納車予定日の5日前に自動アラートが出る設定にすれば、納車遅延を防止できます。
フェーズ3:POSレジとTKC連携を追加(初期費用30万円、月額+2万円)
最後にPOSレジを導入し、TKCとの連携を設定します。この段階では、すでに在庫管理と納車管理がシステム化されているため、POSレジ導入もスムーズです。
段階的導入なら、各フェーズで効果を確認しながら進められるため、「高額投資したのに効果が出ない」というリスクを回避できます。
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