金属加工業の段取り最適化完全ガイド|年間360時間のロスを回復する5つの方法 - Wikiだるま

「段取り替えに時間がかかりすぎて、実際の加工時間より長い」「旋盤とフライスの段取りを最適化できていない」「ベテラン作業者しか段取りができない状況が続いている」
金属加工業では、段取り時間が生産性を大きく左右します。多品種少量生産が主流の中、1日に何度も段取り替えが発生し、その度に30分から2時間のロスが発生しています。
この記事では、東大阪や大阪、埼玉などの金属加工業での実例をもとに、段取り時間を年間360時間削減する具体的な方法を解説します。
金属加工業の段取りが難しい5つの理由
理由1:製品種類が異常に多い
従業員30名規模の金属加工業では、年間で300種類以上の製品を製造しています。ロット数は1個から50個と少量で、同じ製品を連続して作ることはほとんどありません。
製品が変わるたびに、治具の交換、工具の交換、プログラムの変更、測定器の準備が必要になります。1回の段取り替えに平均1時間かかり、1日3回の段取り替えで3時間のロスになります。
年間で計算すると、段取り替えだけで約900回、合計900時間から1,800時間(112日から225日分)の生産能力が失われています。
理由2:段取り手順が属人化している
ベテラン作業者は、長年の経験で最適な段取り手順を知っています。製品Aの後に製品Bを加工する場合、治具はそのまま使えるから交換不要。工具は刃先だけ変えれば良い。このような知識は、頭の中にしか存在しません。
新人作業者は、すべての段取りをマニュアル通りにフルセットアップします。本来なら30分で済む段取りが、1時間かかってしまいます。ベテランが休むと、生産効率が著しく低下します。
理由3:類似製品の識別ができていない
製品番号が違うだけで、形状や材質がほぼ同じ製品が多数あります。製品A-001と製品A-002は、直径が1mm違うだけ。製品B-100と製品B-101は、材質が同じで形状が類似しています。
これらの類似製品を連続して生産すれば、段取り時間を大幅に削減できます。しかし、製品マスタに類似度の情報がなく、生産計画を立てる担当者も気づいていません。
理由4:段取り時間のデータベース化ができていない
「製品Aから製品Bへの段取り替えは、だいたい1時間」という大雑把な見積もりしかありません。実際には、45分で済むこともあれば、1時間30分かかることもあり、誤差が大きいです。
過去の段取り時間実績がデータベース化されていないため、正確な生産計画が立てられません。納期の見積もりも不正確になり、顧客との信頼関係に影響します。
理由5:設備ごとの得意・不得意
NC加工機10台は、同じ型番でも実際の性能にばらつきがあります。設備Aは高精度加工が得意、設備Bは大型ワークが得意、設備Cは経年劣化で精度が落ちている、といった特性があります。
この特性を考慮せずに、単純に空いている設備に割り当てると、段取り時間が長くなったり、不良率が上がったりします。ベテラン作業者は、この特性を経験で把握していますが、若手は知りません。
段取り最適化の5つの方法
方法1:類似製品のグルーピング生産
具体的な手法
製品マスタに、材質、形状、サイズなどの属性情報を追加します。製品A-001は「材質:S45C、形状:円筒、直径:50mm」、製品A-002は「材質:S45C、形状:円筒、直径:51mm」といった情報です。
AIを活用した生産スケジューラーなら、この属性情報から類似製品を自動でグルーピングします。材質が同じ製品、形状が類似している製品を、連続して生産するスケジュールを自動生成します。
削減効果
類似製品をグルーピングすることで、段取り時間が平均30%削減されます。1回1時間の段取りが、類似製品なら40分で済みます。1日3回の段取りで、1日あたり1時間の削減です。
年間で計算すると、約360時間(45日分)の生産能力が回復します。金属加工業の平均的な利益率を考えると、数百万円のコスト削減に相当します。
方法2:段取り時間のデータベース化とAI学習
実装方法
作業者が段取り開始時刻と終了時刻を、タブレットで記録します。製品A-001から製品B-100への段取り替え、設備はNC-3、担当者は山田さん、開始9:00、終了9:45、所要時間45分、という情報が蓄積されます。
数ヶ月から1年間のデータが蓄積されると、AIが学習を開始します。製品A-001から製品B-100への段取り替えは、平均47分、標準偏差8分、最短35分、最長60分、という統計データが生成されます。
活用方法
新しい生産計画を立てる際、過去の実績データから段取り時間を予測します。「製品Cから製品Dへの段取り替えは、過去5回の平均が52分なので、今回も52分と見積もる」という自動予測ができます。
予測精度は、データが蓄積されるほど向上します。導入初期は誤差±30%ですが、1年後には誤差±10%まで向上し、現実的な生産計画が立てられるようになります。
方法3:段取り手順の標準化とデジタル化
標準化の進め方
ベテラン作業者の段取り手順を、動画で記録します。製品A-001から製品B-100への段取り替えの様子を、スマートフォンで撮影します。30分から1時間の動画になります。
この動画を見ながら、段取り手順を文書化します。手順1:治具Aを取り外す(5分)、手順2:治具Bを取り付ける(10分)、手順3:工具1を工具2に交換(8分)、といった具合に、作業を分解します。
デジタル化の方法
文書化した手順を、生産管理システムに登録します。各製品の段取り手順が、データベースに格納されます。新人作業者は、タブレットで段取り手順を確認しながら作業できます。
動画も一緒に表示されるので、文字だけでは分かりにくい箇所も視覚的に理解できます。ベテランが休んでも、新人が標準的な段取り時間で作業できるようになります。
方法4:工具・治具の配置最適化
現状の問題点
多くの金属加工工場では、工具や治具が倉庫に無秩序に保管されています。どこに何があるか分からず、必要な工具を探すだけで10分から20分かかります。
よく使う工具と、めったに使わない工具が、同じ棚に混在しています。頻繁に使う治具が、倉庫の奥にあり、毎回取りに行くのに時間がかかります。
最適化の方法
過去1年間の工具・治具の使用頻度を分析します。工具Aは週5回使用、工具Bは月1回使用、という統計データを作成します。
使用頻度が高い工具・治具は、NC加工機の近くに配置します。使用頻度が低いものは、倉庫の奥に保管します。この配置最適化により、工具・治具の取得時間が平均5分短縮されます。
類似製品で共通して使える治具は、まとめて配置します。製品A系列の治具は1箇所、製品B系列の治具は別の場所、というグルーピングにより、探す時間が削減されます。
方法5:段取りレス加工の推進
段取りレスとは
段取り替えを不要にする、または最小化する加工方法です。複数の製品を、段取り替えなしで連続加工できるようにします。
実現方法の例
複合機の活用により、1台の設備で旋盤加工とフライス加工の両方ができる複合機を導入します。これまで旋盤とフライスで2回の段取り替えが必要だったものが、1回で済みます。
万能治具の開発により、複数の製品に対応できる万能治具を設計します。製品A、B、Cで共通して使える治具なら、製品を切り替えても治具交換が不要です。
工具の標準化により、できるだけ少ない種類の工具で、多くの製品に対応できるようにします。工具の種類が減れば、工具交換の頻度も減ります。
実際の改善事例:大阪の金属加工業
改善前の状況
大阪府の金属加工業(従業員40名、NC加工機12台)では、以下の課題を抱えていました。
段取り時間が1日平均4時間で、実際の加工時間より長い状態でした。段取り手順がベテラン作業者に属人化しており、ベテランが休むと生産効率が30%低下していました。
製品種類が400種類以上あり、類似製品の識別ができていませんでした。製品マスタに類似度の情報がなく、生産計画担当者も気づいていませんでした。
導入したシステムと施策
同社が導入したのは、AI搭載の生産スケジューラーと、段取り時間記録システムです。初期費用0円、月額5万円からの料金プランで、段取り最適化機能を標準搭載していました。
具体的な施策として、製品マスタに材質・形状・サイズの属性情報を追加しました。400種類の製品を、3ヶ月かけてデータベース化しました。作業者がタブレットで段取り時間を記録し、6ヶ月で約1,000件のデータが蓄積されました。
ベテラン作業者の段取り手順を、30製品分動画撮影し、文書化しました。段取り手順書として、生産管理システムに登録しました。
改善効果
段取り時間が1日平均4時間から2.5時間に、37%削減されました。類似製品のグルーピング生産により、段取り回数自体が減少しました。年間で計算すると、約540時間(67日分)の生産能力が回復しました。
ベテラン依存度が低下し、新人作業者でも標準的な段取り時間で作業できるようになりました。ベテランが休んでも、生産効率の低下が10%以内に抑えられるようになりました。
納期遵守率が従来の80%から95%に向上しました。正確な段取り時間予測により、現実的な納期回答ができるようになり、顧客からの信頼が向上しました。
設備稼働率が従来の62%から75%に向上しました。段取り時間が削減された分、実際の加工時間が増え、売上が約15%増加しました。
段取り最適化の投資対効果
初期投資
AI搭載生産スケジューラー導入で、初期費用0円、月額5万円から15万円です。タブレット10台(段取り時間記録用)で、約30万円です。製品マスタのデータベース化作業で、社内工数100時間から200時間(外注なら50万円から100万円)です。
段取り手順の動画撮影・文書化で、社内工数50時間から100時間(外注なら30万円から50万円)です。合計で初期投資は約100万円から200万円、月額費用は5万円から15万円です。
削減効果
段取り時間が年間360時間削減されることで、金属加工業の平均時給を5,000円とすると、年間180万円の人件費削減です。回復した生産能力で新規受注を獲得すれば、年間で300万円から500万円の売上増加が期待できます。
納期遵守率向上により、顧客からの信頼が増し、リピート受注が増加します。クレーム対応の時間削減も含めると、年間で50万円から100万円の効果があります。
合計で年間530万円から780万円の効果が期待でき、初期投資100万円から200万円は、3ヶ月から5ヶ月で回収できます。
よくある質問
段取り時間の記録は作業者の負担にならないかという質問には、タブレットでボタンを2回タップするだけです。段取り開始時に「開始」ボタン、終了時に「完了」ボタンを押すだけで、所要時間は5秒以内です。慣れれば負担にはなりませんとお答えします。
AI学習に必要なデータ量はどのくらいかという質問には、最低でも100件以上のデータがあれば、学習を開始できます。精度を高めるには、500件から1,000件のデータが理想です。毎日3回の段取り替えなら、3ヶ月から6ヶ月でこのデータ量に達しますとお答えします。
類似製品のグルーピングは手動で設定するのかという質問には、AIが自動で類似製品を検出します。材質、形状、サイズなどの属性情報から、類似度を計算し、グルーピングします。最終的には人間が確認・調整しますが、90%以上は自動で正しくグルーピングされますとお答えします。
段取り手順のデジタル化に、どのくらいの時間がかかるかという質問には、1製品あたり、動画撮影30分、文書化1時間、システム登録30分で、合計2時間程度です。100製品なら200時間(25日分)の作業です。主要な30製品から始めて、徐々に拡大することを推奨しますとお答えします。
複合機の導入は必須かという質問には、必須ではありません。既存のNC加工機で、段取り最適化は十分に可能です。ただし、設備更新のタイミングで複合機を検討すると、さらなる段取りレス化が実現できますとお答えします。
ベテラン作業者の抵抗はないかという質問には、最初は「自分の仕事が奪われる」と感じる方もいます。しかし、実際には段取り時間が削減された分、より高度な加工や、新製品の試作に時間を使えるようになります。ベテランの価値は変わらず、むしろより重要な業務に集中できると説明することで、理解を得られますとお答えします。
段取り最適化のロードマップ
フェーズ1:現状分析(1ヶ月目)
段取り時間の実態を把握します。どの製品からどの製品への段取り替えが多いか、平均時間はどのくらいか、ばらつきはどの程度か、をデータで明らかにします。
ベテラン作業者にヒアリングし、段取り時間短縮のノウハウを収集します。製品マスタを整理し、類似製品の候補をリストアップします。
フェーズ2:システム導入と基盤整備(2〜3ヶ月目)
生産スケジューラーを導入し、製品マスタに属性情報を追加します。作業者にタブレットを配布し、段取り時間の記録を開始します。
最初は記録だけに集中し、データを蓄積します。この段階では、まだAIは学習していません。
フェーズ3:AI学習と最適化開始(4〜6ヶ月目)
データが100件以上蓄積されたら、AIの学習を開始します。類似製品のグルーピングが自動で提案されるようになります。
AIが生成した生産スケジュールを試験的に使い始めます。最初は人間が確認・修正しながら、徐々にAIの提案を信頼していきます。
フェーズ4:段取り手順のデジタル化(7〜9ヶ月目)
主要30製品の段取り手順を、動画撮影し文書化します。システムに登録し、新人作業者が参照できるようにします。
ベテランの知識が、組織の財産として蓄積されます。
フェーズ5:継続的改善(10ヶ月目以降)
AIの予測精度が向上し、段取り時間の見積もり誤差が±10%以内になります。新製品が追加されても、類似製品から段取り時間を自動で予測できます。
工具・治具の配置も最適化され、全体として段取り時間が30〜40%削減されます。
まとめ:段取り最適化で競争力を高める
金属加工業の段取り最適化には、類似製品のグルーピング生産、段取り時間のデータベース化とAI学習、段取り手順の標準化とデジタル化、工具・治具の配置最適化、段取りレス加工の推進という5つの方法があります。
これらを実践することで、年間360時間から540時間(45日から67日分)の生産能力を回復できます。初期投資100万円から200万円は、3ヶ月から5ヶ月で回収可能で、費用対効果が非常に高い改善です。
Wikiだるまは、金属加工業向けの段取り最適化機能を標準搭載しています。初期費用0円、月額5万円から導入でき、AI自動スケジューリング、段取り時間学習、類似製品グルーピングなど、必要な機能がすべて揃っています。
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